SFマンガ駆動UXデザイン
2021年4月のブログ「漫画駆動UXデザイン」では、ケイプラス・ソリューションズ代表の田中が担当している奈良先端科学技術大学院大学と大阪芸術大学の合同演習授業を紹介しました。
今回は合同演習授業の成果を紹介します。
一般的なUXデザインの中でも、構想したユーザー体験を可視化するためのストーリーボードを記述する手段としてマンガが利用されます。この授業でも、検証(Validation)の手段としてマンガを活用してきました。
2020年度からは、検証のためのマンガの活用から一歩進めて、SFマンガで未来をイノベートしようという試みに挑戦しています。
SFで未来を創造しようというアプローチは、インテルをはじめとして、すでにさまざまな企業で取り組まれています。
SFという物語は、次の図に示すように、現在の確率論的な延長にある未来や、起こりうるであろう未来の予測よりもさらに大きな変化として、「創り出す未来」を描くためのツールとして期待されます。
「サピエンス全史」の著者であり現代の智の巨人と言われるユヴァル・ノア・ハラリは、彼の著書「21 Lessons」で「人間は、事実や数値や方程式ではなく、物語の形で物事を考える」と語っていました。
我々はさらに、SFという未来を物語る手法に、マンガの技法をアドインしています。マンガ技法の核心はキャラクターの設定です。設定した状況にキャラクターを置けば、物語がひとりでにはじまる程度の具体性をもったキャラクターを描き出します。
この授業では、毎年一つのテーマを学生に与えています。昨年度のテーマは「幸せな共感」でした。学生が描き出した未来は、メタバース空間でのコミュニケーションと倫理の問題でした。AIによって安心なコミュニケーションが約束された空間に、ある日生じた綻びから安心であったコミュニケーションが崩れ出し、主人公たちがそれをどのように乗り切っていくのかといったストーリーです。そして1年経った2021年。Facebookが「メタ」と社名を変更し、AIとメタバースが創り出すコミュニケーション空間は、学生たちが描いた未来よりも急激なスピードで実現しそうな気配です。
そして今年度のテーマは「2028年のヘルスケア」でした。腕時計が血圧や睡眠を記録し、集められた生体データの予防医学への活用はすでにはじまっています。そのなかで、学生たちが描いた未来のヘルスケアの主題はメンタルヘルスでした。7年後の近い未来では、若者たちの心の健康が今以上に問題となっているとの物語設定だったのです。
それでは今年度の学生の成果をご覧ください。
制作マンガ
システム仕様
開発プロセス
PRePモデルの手法を適用して開発プロセスを振り返り、ポストモーテムを行った結果です。