「PReP」 は、Products Relationship Processの略です。
PRePモデルは、プロセスモデリングの方法としては、成果物視点によるプロセスモデルに分類されます。
成果物視点とはどういうことか、そしてPRePモデルではどのようにしてプロセスをモデル化し、分析し設計するのか、基本的な考えかたについて説明します。
PRePモデルを用いた実際のプロセスのモデル化方法、業務改善、システム開発への適用方法などの詳しい情報は会員ページからどうぞ。
PRePモデルによる業務レベル設計
システム開発の超上流工程は、
- 業務からの要求を解釈して何をシステムで実現するかを構想する
- システム構想を解釈してシステム化計画を立てる
- システム化計画を解釈して要求を定義する…
といったように、前工程で作成された要求を解釈するプロセスの連鎖と考えることができます。
また多くの場合、業務プロセスの改善のためのBPR (Business Process Re-engineering) が、同期せずに進められてしまうこともあります。
本来は、システム要件定義までのプロセスは、計算機システムをサブシステムと見立てた業務レベルの設計プロセスであるべきです。つまり「業務をこのように進めるので、この部分をITで実現したい」といったように、業務の設計と同時にITシステムへの要求が定義されなければなりません。
PRePモデルは、超上流工程からシステム要件定義までのスコープを、業務レベルのシステムと見立てて、そのプロセスを設計する手法です。業務レベルの設計を行うことによって、トレーサビリティーを確保した状態でITシステムへの要求を出力することができます。
超上流工程が前工程で定義された要求事項の解釈の連鎖となる原因には、業務プロセスの記述方法も関係しています。従来のタスク視点によるプロセスモデルは、業務やシステムの要求を解釈した結果の「処理」を記述してしまうのです。
業務をシステムレベルで設計するためには、成果物視点によるプロセスモデルが必要となるのです。
成果物視点とは
レストランの業務を考えてみましょう。
例えば、ホール業務には、「来客対応」「接客対応」「予約受付」「注文」「会計」などの仕事があります。では、なぜこのような仕事が必要なのでしょうか。もしくは、ここにあげた仕事でホール担当のやるべきことがすべて網羅されているでしょうか。
レストランは、食事の提供に付随するサービスの対価を受け取るビジネスと言えます。
レストランのビジネスゴールを達成するためには、顧客の注文に対して、調理、配膳、精算を正しくつなげなければなりません。これらをつなげるために「伝票」が使われています。
つまり、「レストランのホール業務には、注文を取るという仕事が必要である」と考えるのではなく、「レストランの業務を回すためには伝票が必要であり、伝票が注文を取るというタスクを要求している」と考えます。このような考えかたが、成果物視点による業務プロセスモデリングの基本です。タスクは成果物から要求されるものであって、業務の本質ではないのです。
実際に、注文を取るという仕事は、伝票に注文を記載するためにいくつか考えられる方法の一つになります。顧客自身が電子タブレットで注文するレストランでは、ホール業務に注文を取るという仕事はありません。
PRePモデルは、成果物視点による業務プロセスモデリングのための方法として、次に示すようなとてもシンプルなルールから、業務を正確に記述し、分析し、設計できるように体系化されています。
成果物を定義する2つの観点
成果物視点でのプロセスモデルでは「何を成果物として定義するか」が重要なポイントになります。
PRePモデルでは、次の2つの観点によって成果物を定義します。
1.業務目的から見た機能的なまとまり
2.業務プロセスの中で管理されているもの
レストランでは、紙の伝票が使われる場合もありますし、ハンディ端末型のものもあるでしょう。形態は異なっていても、それらは「伝票」として機能します。また、一般的なレストランでは伝票はテーブル単位で管理されます。調理や配膳、そして会計などのサービスがテーブル単位で行われるためです。
このように、レストラン業務の目的から見たときに、テーブル単位で、調理、配膳、精算に顧客の注文を正しくつなげるための機能的なまとまりに「伝票」という名称がつけられているのです。
このような機能的な観点による意味付けを、認知心理学では「チャンキング(Chunking)」と呼びます。チャンキングされたひとつのまとまりがチャンクです。
PRePモデルでの成果物の定義は、業務の目的から見た機能的なまとまりとして管理されているチャンクとなります。
2種類の関係表現
タスク視点のプロセスモデルでは、一般的にタスク間の時間的な順序関係や因果関係が記述されます。
一方で、成果物視点のプロセスモデルでは、時間の関係ではなく、論理的な構造を描くのです。
PRePモデルでは、次の2種類の関係でプロセスの論理構造を定義し、それぞれを実線と点線の矢線で表します。
1.入力関係(実線矢線)
2.同期関係(点線矢線)
入力関係は、成果物の持つパラメータの値が入力される関係です。
同期関係は、成果物のそれぞれのパラメータの値が相互に影響を及ぼしあって決まる関係です。
この2種類の関係のうち、同期関係は、PRePモデルを特徴づける定義方法となります。
同期関係を用いることによって、タスク視点のプロセスモデルで現れる条件分岐を構造として描くことがきるようになるのです。このことによって条件の場合分けなどに起因するプロセスの網羅性の判断から解放されるようになり、また、プロセスの構造をシンプルに描くことができるようになります。
関係の2つの基本ルール
入力と同期の2つの関係から、モデルの論理的な検証も可能になります。「この関係性はありえない(誤っている)」という判断が、次の2つのルールによって導くことができるのです。この2つの論理的な検証関係は、正しいプロセスモデルを描く際に大変重要な視点となります。
- 入力が1つだけの場合はエラーである
お湯が必要な場合、水だけではいくら待っていてもお湯にはなりません。水に熱が加わってお湯になります。このように、ある成果物の入力成果物がたった1つだけであるという関係はエラーです。1対1の入力関係が描かれている場合には、「他に入力されている成果物があるはずだ」と判断され、描かれるべき成果物を特定することができます。 - 同期する成果物は重ね合わせて一つと見なすことができる
同期関係は、「状態が異なる同一実体」もしくは「異なる成果物の関連する状態」です。
このルールと1の「入力が1つだけの場合はエラーである」を組み合わせることによって、構造関係の全てのエラーを検証することが可能になります。
ここに示した定義やルールは、PRePモデルの基本的なものです。なぜ、成果物視点で考えるべきなのか、業務プロセス改善へ適用する場合の実際の方法や、描いた業務プロセスからシステム要件定義を生成するためのツールなど、詳しい情報は会員ページに掲載されています。
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